Kindle出版の代行は、頼み方を間違えなければ大丈夫です。分かれ目は、代行に「作業」だけを渡すか、「何のための本か」という考える部分まで渡してしまうかにあります。文字起こしや整え、表紙、登録は任せてかまいません。本で言いたいことと、事実の確認、出す名義は、自分の手元に残してください。
出す名義というのは、どのアカウントから本を出すかです。実は、代行の会社のアカウントから本を出すやり方もあります。ここも、頼む前に決めておきたい点の一つです。
「本を出したいけれど、書く時間がない」「話すのは得意だから、話した内容を本にしてもらえないか」「代行に頼んで失敗した話を聞いて、不安になっている」。経営者や専門家の方から、こうした相談を受けることがよくあります。
僕は一般社団法人アインで、知見はあるのに本や講座の形にできていない方の話を聞き、こちらで本を作る仕事をしています。原稿の元にするのは、その方が話した声です。この記事では、その経験から、代行に頼む前に決めておくことと、頼むときに確かめることをまとめます。
Kindle出版の代行は頼んで大丈夫?分かれ目は「何を渡すか」
検索で上位に出てくる記事の多くは、「連絡が取れなくなった」「権利を業者に持たれた」「仕上がりが雑だった」といったトラブルと、業者の選び方を並べています。どれも知っておいて損はない話です。
ただ、業者を慎重に選んでも、うまくいかないことがあります。頼む側が、本の中身を考える部分まで代行に預けてしまうケースです。この場合、作業はきちんと進んでいるのに、できあがった本が「自分の本」に見えません。

| 任せていい作業 | 手元に残すもの |
|---|---|
| 話した音声の文字起こし | この本を何のために出すか |
| 読みやすい文への整え、章の並べ替え | 本で一番言いたいこと |
| 表紙・紹介文の案づくり | 数字・事例・経歴が正しいかの確認 |
| KDP(Amazonで本を出すための管理画面)への登録作業 | どの名義で出すか、売上を誰が見るか |
左の列は、得意な人やAIがやったほうが早く、きれいに仕上がります。右の列は、名前を出す本人にしか決められません。代行を頼むときは、まずこの線を自分の中で引いておいてください。
代行でよく聞くトラブルと、頼む前に確かめること
よく挙がるトラブルは、ほとんどが頼む前の確認で防げます。業者のせいにする前に、こちらで確かめられることを表にしました。
| よく聞くトラブル | 頼む前に確かめること |
|---|---|
| お金を払ったあと、連絡が取れなくなった | どこまで進んだら、いくら払うのかを書面で決める |
| 本の権利や表紙の画像を、業者側に持たれた | 原稿と表紙の権利が誰に残るのかを、契約書で確かめる |
| 自分で売上を確かめられない | 自分の名義(自分のKDPのアカウント)で出すかを確かめる |
| 仕上がりが思っていたものと違う | 何回まで直せるか、最後に誰が全文を読むかを決める |
| 出したあと、何も起きなかった | 本は名刺がわり。読んだ人が次に何をするか(特典や相談の入口)まで決める |
最後の行は、業者の問題ではありません。出版の目的を決めていなかったことが原因です。ここからは、表の右の列を一つずつ見ていきます。
書く時間がないとき、話した内容から本にしてもらえる?
はい、できます。僕が本を作るときも、原稿の元は本人が話した声です。打ち合わせやインタビューで話してもらい、それを文字にして、読みやすく整えます。

話した声から作る一番の理由は、本人が言っていないことが本に入りにくいからです。最初から誰かが書いた原稿や、AIに一から書かせた原稿だと、言い回しや主張が少しずつずれていきます。本人の言葉が元にあれば、整える人は「どう読みやすくするか」に集中できます。
AIで文章を作る仕事が増えるほど、本人の声の価値は上がると僕は考えています。文の表現をチェックするのはAIに任せても、ベースの原稿は本人の話から起こす。そうすれば、AIが勝手に言い回しを変えてしまう心配を減らせます。
話して作るときは、どう進める?
一度に全部を話そうとすると、まとまりません。僕は、先に目次を決め、1章ずつ話してもらう形で進めます。こちらから質問をして、答えてもらうだけでも十分な材料になります。
- 目次を先に決める。章ごとに、何を話すかを1行で書いておく。
- 1章ずつ話す。普段お客さんに説明している言葉のまま、具体例も入れて話す。
- 章ごとに確かめる。整えた原稿を、その章が終わるたびに本人が読む。
話す回数や日程は、本の長さと話す量で変わるので、最初の打ち合わせで一緒に決めます。章ごとに確かめておくと、方向のずれが小さいうちに直せます。全部できあがってから読むと、ずれが積み重なっていて、直す量が大きくなります。
話して作る進め方と、自分で書く進め方、全部任せる進め方の比べ方は、「自分の経験を本にしたいとき、何から始めればいい?」の記事にまとめています。
なぜ「何のための本か」を代行に任せてはいけない?
本づくりには、手を動かす作業と、考える工程があります。考える工程とは、「この本は誰に向けて、何のために出すのか」「一番言いたいことは何か」を決める部分です。

作業だけを渡していれば、途中で担当が代わっても本の方針は崩れません。決めた方針どおりに、次の人が続きを進めるだけだからです。ところが、考える工程まで渡していると、担当が代わった瞬間に方針がひっくり返ることがあります。前の担当の頭の中にしかなかった「この本の狙い」が、引き継がれないからです。実際に僕も、制作を頼んだ側が考える工程まで渡していて、担当が代わったとたんに方針が変わり、もめてしまった話を聞いたことがあります。
人の力は借りても、人任せにはしない。僕が仕事全般で大事にしている考え方で、本づくりも同じです。代行に頼むときは、最初に本の目的と言いたいことを1枚の紙に書き、それを渡してください。担当が代わっても、その紙があれば同じ本になります。外注全般の線引きは、「外注・運用代行に「全部任せます」で失敗するのはなぜ?」の記事でも詳しく書きました。
代行に渡す紙には、何を書けばいい?
難しく考える必要はありません。次の3行が書いてあれば、担当が代わっても本の向きは変わりません。
| 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 誰に向けた本か | 仕事が忙しくて、発信まで手が回らない小さな会社の社長 |
| 読んだあとに何をしてほしいか | 特典を受け取り、相談の予約をしてもらう |
| 一番言いたいこと | 発信は量より、誰に向けるかを先に決めるほうが大事 |
この紙は、代行に頼まない場合でも役に立ちます。自分で書いていて迷ったときも、この3行に戻れば判断できます。
代行の見本や実績は、どこを見ればいい?
代行を選ぶとき、多くの人は過去に作った本の表紙や冊数を見ます。それも一つの目安ですが、僕は次の3つのほうが大事だと考えています。
- 文章が、その著者の言葉に見えるか。どの本も同じ言い回しなら、著者の声ではなく代行の文体で書かれている可能性があります。
- 本のあとに道が付いているか。本の最後に特典や案内があり、読んだ人が次に進めるようになっているかを見ます。
- 1冊で終わらず、続いているか。同じ著者の本が2冊、3冊と出ているなら、出したあとも一緒に進めている証拠になります。
買う前の人に見えるのは、Amazonというお墨付きと、世に出ている本の数です。何冊も出している人ほど、「この人は続けて本気でやっている」と信用されます。だからこそ、著者にとっては1冊目の出来ばえだけでなく、続けて出せる形を作れるかが大切になります。見本の本を何冊か試し読みして、この3つを確かめてみてください。
原稿や表紙にAIを使う代行は大丈夫?KDPの決まりを確かめる
最近は、原稿や表紙にAIを使う代行も増えています。AIを使うこと自体は問題ではありません。ただし、Kindle(KDP)には、AIで作ったものについての決まりがあります。
KDPのコンテンツ ガイドライン(2026年11月2日に確認)では、新しい本を出すときや、出した本を直して出し直すときに、AIで作った文章・画像・翻訳があれば、Amazonに知らせる必要があるとされています。表紙や本文の画像も含まれます。知らせ方は、本を登録する途中にあるAIについての質問に答える形です。
| 区分 | 中身 | Amazonへの申告 |
|---|---|---|
| AI生成 | AIのツールで文章・画像・翻訳を作った。あとで大きく直しても、ここに入る | 必要 |
| AIアシスト | 自分で作ったものを、AIで直したり、誤りを確かめたりした | 不要 |
つまり、話した声を元に人が原稿を作り、AIで読みやすさを確かめただけなら、申告は要りません。一方で、AIに章を丸ごと書かせたり、表紙の絵をAIで作ったりしたなら、申告が必要です。代行に頼むときは、「どこにAIを使うか」「申告はどうするか」を先に聞いておくと安心です。決まりは変わることがあるので、出す前に必ず最新のページを確かめてください。
誰の名義(アカウント)で出すかを、最初に決める
見落としやすいのが、どのアカウントで本を出すかです。代行の会社のアカウントで出すと、手間は減ります。その代わり、売上を自分で確かめにくくなり、本を少し直したいときも毎回お願いすることになります。

実際に、ネットの質問サイトにも「代行の名義で出したら、どれだけ売れたか自分で確かめられない」という相談が出ています。報告を待つしかない形は、相手を疑いたくなくても不安が残ります。
僕がKindleを作るときは、お客さん本人の名義のKDPのアカウントで出します。アカウントは本人の名義で用意してもらい、その操作の権限をいただいて、登録の作業はこちらで行います。用意のしかたが分からないときも、画面を見ながら一緒に進めます。売上もレビューも本人が自分の画面で確かめられ、あとで直すときも、どこを直すかを本人と一緒に決められます。
最後の確認は誰がする?人が全文を読み、事実は本人が確かめる
代行に頼むと、「プロが作ったのだから大丈夫」と思いがちです。でも、本に名前が載るのは自分です。出したあとに誤りが見つかっても、読者から見れば著者の誤りになります。
僕のところでは、本は出す前に人が全文を読みます。AIのチェックだけで出すことはしません。誤字や読みにくさは、作る側が直します。そのうえで、数字や事例、経歴が正しいかは、本人に確かめてもらいます。ここは、どれだけ腕のいい代行でも代われない部分です。
- 読みにくさ・誤字:作る側(代行)が直す
- 言っていないことが入っていないか:本人が読む
- 数字・事例・経歴が正しいか:本人が確かめる
代行に頼むときは、「最後に誰が全文を読むのか」「本人が確かめる時間をいつ取るのか」を最初に決めてください。全部終わってから一度だけ見るより、章ごとに少しずつ見るほうが、直す手間も小さくなります。
見積りや契約で、何を確かめればいい?
代行の見積りや契約書を受け取ったら、金額だけで比べずに、次の5つが書かれているかを見てください。書かれていなければ、頼む前に聞いて、書面に入れてもらいます。
| 確かめること | 書かれていないと困ること |
|---|---|
| 出す名義(どのアカウントで出すか) | 売上が見えない、直すたびに頼むことになる |
| 原稿と表紙の権利が誰に残るか | 別の本や講座に使い回せない |
| 何回まで直せるか | 直したい所があっても、追加の費用がかかる |
| どこにAIを使うか、申告をどうするか | あとから申告漏れが分かる |
| 出したあとに何をしてくれるか | 出して終わりになり、次につながらない |
権利や契約の細かい中身で迷ったときは、契約の専門家に確かめてください。ここで大事なのは、あとで困ることを、頼む前に言葉にしておくことです。
出版のあとまで頼める?本は「出して終わり」にしない
代行の多くは、本をKindleに出すところまでで仕事が終わります。けれど、経営者や専門家が本を出す一番の理由は、印税よりも信用です。「この人はちゃんとしている」と、会う前の人に伝わる物を外に置いておく。そう考えると、本を出したあとの道まで考えておく必要があります。

Kindleは、誰が買ったかが手元に残りません。そこで、本の最後に特典を用意し、LINEやメールにつながる道を作ります。その先に、相談や講座の入口を置きます。本だけ作って、この道がないと、読んでくれた人はそこで止まってしまいます。道の作り方は「Kindleを出したのに売れない?名簿が残らないときに、本を出したあとの道をどう作るか」の記事で詳しく書いています。
もう一つ、1冊で終わらせないことも大事です。同じ話でも、本では読み物に、講座では手順に、と形を変えて出せます。1つの話を本や講座、記事に作り変えること(リパーパスといいます)の考え方は「リパーパスとは?」、講座にする手順は「セミナーや自分の知見をUdemy講座にしたい。何から始める?」の記事にまとめました。
代行に頼む前に、今日確かめる5つのこと
ここまでの話を、頼む前のチェックにまとめます。全部に「はい」と言えれば、代行に頼んでも本が自分の物から離れることはありません。

- 何のための本か決めたか。読者は誰で、読んだあとに何をしてほしいかを1行で書く。
- 話した声から作るか。原稿の元を自分の言葉にして、言っていないことが入らないようにする。
- 自分の名義で出すか。売上と修正を、自分の手元に残す。
- 最後は人が全文を読むか。誰が読み、自分はいつ事実を確かめるかを決める。
- 本のあとの道があるか。特典、LINE、相談の入口までを一緒に考える。
欠けているものが一つでもあれば、そこを決めてから頼んでください。順番を逆にして、頼んでから考えようとすると、作業だけが先に進み、あとから直す手間が増えます。
アインでは、本づくりのどこまでを引き受ける?
アインでは、話を聞いて「何のための本か」を一緒に決めるところから始めます。決めた目的と言いたいことを紙にまとめ、本人に確かめてもらってから、作業に入ります。
原稿は、本人に話してもらった声から作ります。整える作業、表紙、紹介文、本人名義のKDPへの登録までを、こちらで進めます。本だけで終わらせず、特典やLINE、講座など、本のあとの道もあわせて作ります。お客さんがAIのツールに触る必要はありません。
本人にお願いするのは、話すことと、言いたいことと事実が合っているかを確かめることです。それ以外の手を動かす部分は、こちらで引き受けます。
よくある質問
話すのが苦手でも、話した内容から本にできますか?
できます。一人で話し続ける必要はありません。こちらから質問をして、それに答えてもらう形で進めます。普段お客さんに説明していることを、そのまま話してもらえれば十分です。
代行に頼んだ本でも、著者として名前を出していいのですか?
本の中身が自分の考えと経験で、最後に自分で確かめているなら、著者として出すのが自然です。だからこそ、話した声を元にし、言っていないことが入っていないかを自分で読むことが大事になります。
原稿にAIを使うと、Amazonで出せなくなりますか?
出せなくなるわけではありません。ただ、AIで作った文章や画像があれば、出すときにAmazonに知らせる必要があります。自分で作った物をAIで直しただけなら、申告は要りません。決まりは変わることがあるので、出す前にKDPの最新のページを確かめてください。
すでに代行の名義で出した本は、どうすればいいですか?
まずは、今の売上やレビューを確かめられる状態かを、代行の会社に聞いてみてください。そのうえで、名義を移せるか、自分の名義で出し直すかを相談します。出し直す場合は、前の本をどう扱うかも先に決めておくと混乱しません。
途中で担当が代わると言われたら、どうすればいいですか?
まず、最初に渡した「本の目的と言いたいことの紙」が、新しい担当にも渡っているかを確かめてください。そのうえで、ここまでの原稿を新しい担当が読んだかを聞きます。紙と原稿が引き継がれていれば、本の向きは変わりません。
アインに頼むと、費用はどうなりますか?
月額33,000円(税込)に、事前に合意した対象の売上から合意した費用を引いた粗利の30%を加えた形です。アインは本を1冊作って終わりにするより、本のあとの道まで一緒に作る形で引き受けています。進め方と料金の詳しい中身は、外部戦略執行責任者のページにまとめています。外部戦略執行責任者は、社外の立場で、何を作るかを一緒に決め、作って公開し、直すところまでやる役のことです。
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相談したい方へ
本を出したいけれど、書く時間がない。代行に頼みたいけれど、何を渡せばいいか分からない。そんなときは、今の仕事の内容と、お客さんによく聞かれることをそのまま聞かせてください。本の目的を一緒に決め、こちらで引き受けられる所を具体的にお伝えします。先に自分の状況を確かめたい方には、今の事業のどこで止まっているかを数分で確かめられる診断もあります。
執筆・監修:荒屋明神(一般社団法人アイン 代表理事/外部戦略執行責任者)。最終更新:2026年11月2日
