
自分の経験を本にしたいときは、書き始める前に3つを決めます。誰の悩みに答える本か、読み終えた人が何をできるようになるか、読んだあとにどこへ進んでもらうか。この3つが決まれば、Kindleの手順は後からついてきます。
Kindle出版の解説は、アカウントの作り方、原稿のファイル化、表紙、申請の順に進むものが多いです。手順は大事ですが、先にそこから入ると、書き終えたのに誰にも読まれない、読まれても何も起きない、という本になりがちです。
この記事では、一般社団法人アインの荒屋明神として、僕が現場で見てきた「経験を1冊にするときの順番」を説明します。専門家・経営者・先生業の方で、自分の仕事や経験を本にしたい方、書く時間が取れずに止まっている方に向けて書いています。
自分の経験を本にしたいとき、最初に何を決めればいいですか?
最初に決めるのは、書く内容ではなく、本の役割です。僕が見てきた範囲では、止まる人の多くは「何を書くか」で迷っています。ところが、役割が決まると、何を書くかの大半は自然に絞られます。
決めることは3つです。
- 誰の悩みに答えるか。自分の経験を並べるのではなく、読む人が困っていることから逆に選びます。
- 読み終えたら何ができるか。「分かった」で終わらず、「これを今日やってみよう」と言える状態を目標にします。
- 読んだあとにどこへ進むか。特典、LINE、メルマガ、相談など、本の次の入口を先に決めます。

3つ目は、本を書く前に決めるのが理想です。理由は単純で、本の最後の数ページと、巻末の案内が変わるからです。出したあとに足すこともできますが、発売直後の読者が一番多いので、逃したくありません。出したあとの道の作り方は、別の記事(下の関連ページ)にまとめています。
なぜ手順から入ると失敗しやすいのですか?
手順は、誰がやっても同じ答えが出るものです。本の中身は、誰が書くかで答えが変わるものです。前者から入ると、作業は進みますが、本の個性や役割が曖昧なまま完成します。
僕は、Kindleは体系化されていなくてもよい、自由度の高い媒体だと考えています。体系だった知識を教えるのはUdemyの役目で、Kindleは「この人はこういう考え方の人だ」と知ってもらう入口になります。だから、きれいな教科書を作ろうとして手が止まる必要はありません。
一方で、自由に書いていい媒体だからこそ、役割を決めずに書くと散らかります。経験をそのまま並べた日記は、書いた本人には価値があっても、初めて手に取る人には何の本か分かりません。
出版に売上を期待していいのですか?
僕の考えははっきりしています。先生業や専門家にとって、出版の最大の役割は印税ではありません。中身の品質を目で見て確かめにくい仕事だからこそ、本という形で「この人はちゃんとしている」を、会う前に伝える役目です。
売上は、あればおまけという位置づけです。目的を印税に置くと、数字が思ったほど伸びないときに「失敗した」と感じ、続かなくなります。目的を信頼の外付けに置けば、1冊出した時点で一つの成果が手元に残ります。
実績が少ない時期ほど、本は役に立ちます。実際に提供した件数だけが実績ではありません。自分の知識や仕事を形にした成果物があれば、営業の場で相手の机に置いて話を始められます。本は、実績を確認できる形にしたものです。
自分の経験を、どう棚卸しすればいいですか?
経験を本にするときの最初の作業は、思い出せる限りを紙に書き出すことです。ただし、全部を本に入れるわけではありません。書き出した経験を、次の3つに分けます。
| 分け方 | 中身 | 扱い |
|---|---|---|
| 読者に役立つ経験 | 読者の悩みに直接答える。失敗と、そこからの立て直しを含む | 本の中心にする |
| 役立つが、今は出せない話 | お客さんの名前や、相手が公開を望まない内容 | 匿名にして形を変えるか、本には入れない |
| 書かないこと | 愚痴、他人への批判で終わる話、事実が確かめられない話 | 書かない |

お客さんの事例は、本の説得力を上げます。ただ、名前や数字をそのまま出すと、相手に迷惑がかかります。僕は、事例を使うときは相手を特定できない形に直す、直せないなら使わない、と決めています。
もう一つ大事なのは、本人の声を残すことです。AIで文章を整えるのは便利ですが、AIに任せるほど、本人の言い回しは薄まります。僕は、原稿のもとは必ず本人が話した音声から起こす形にしています。そこにAIで整える作業を重ねれば、言い回しが勝手に変わるリスクを抑えられます。
どれくらいの長さで書けば、本として成り立ちますか?
僕が現場で聞いた目安では、電子書籍は3万字前後が最も読まれやすい長さです。紙の一般書籍は10万字から15万字ほどなので、その3分の1から4分の1です。これは第三者の統計ではなく、出版に詳しい方との定例の会話で出た相場感なので、目安として受け取ってください。
3万字は、構成を決めれば現実的な量です。1章を3,000字前後で書くなら、10章分です。話して作る場合は、数回に分けて録音すれば素材は集まります。
長くすれば価値が上がるわけではありません。読者が1冊を読み切れる長さで、役割を果たす内容が入っていれば足ります。足りない分は、次の1冊に回せばいいと考えています。
本ができるまでの流れは、どう進めればいいですか?
全体の流れは5つに分けられます。順番に進めると、迷う場所が減ります。

- 話す・書く。最初は整えず、思いつくまま素材を出します。
- 目次に並べる。素材を、読者の悩みの順番に並べ直します。
- 整える。重複を削り、言い回しをそろえ、誤字を直します。
- 表紙と紹介文を作る。手に取る人が最初に見るのは、ここです。
- KDPで出す。操作や条件は変わることがあるので、最新の公式案内を確認して進めます。
この中で、最も時間を取るべきなのは2番目の目次です。目次ができると、本の8割は決まります。素材を出す作業は、後からいくらでも足せます。一方、並び順を間違えた本は、書き直しが大きくなります。
誤字の確認は、必ず自分以外の目で行います。自分の文章は、読んでも誤字を見落とします。ツールに加えて、少なくとも一人に読んでもらってください。
タイトル・表紙・紹介文は、何を基準に決めればいいですか?
手に取るかどうかは、本文より先に、タイトルと表紙と紹介文で決まります。ここは、冒頭で決めた3つの決め事をそのまま使います。
- タイトル。誰の、どんな悩みに答える本かが、読んだ瞬間に分かる言葉にします。凝った比喩より、悩みの言葉を優先します。
- 表紙。小さく表示されても、何の本かが読み取れる大きさの文字にします。飾りは減らします。
- 紹介文。冒頭の数行で、読み終えたら何ができるかを書きます。詳しい説明は、その後です。
よくある失敗は、自分の気に入った言葉でタイトルをつけることです。自分には意味が通じても、初めて見る人には伝わりません。声に出して読み、初めて聞く人が一度で意味をつかめるかを確かめてください。
このときも、本の役割が効きます。信頼を伝える本なのか、悩みを解決する本なのか。役割によって、タイトルの言葉遣いも、紹介文の書き出しも変わります。
自分で書く時間がないときは、どうすればいいですか?
書く時間が取れないのは、多くの経営者・専門家に共通する悩みです。進め方は3つあります。
| 進め方 | 向く人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分で書く | 書くことが苦でなく、まとまった時間が取れる人 | 完成まで時間がかかる。途中で止まる人が多い |
| 話して作る | 話す方が得意で、考えを口にすると整理される人 | 録音の文字起こしを整える作業は別に必要 |
| 人やAIに任せる | 日々の仕事が忙しく、時間がどうしても足りない人 | 内容の最終確認は自分で行う |

どの方法でも、任せてはいけない部分があります。それは、本に書く主張と、事実の確認です。任せた原稿に、自分が言っていないことが入っていないか。数字や事例が正しいか。この確認は、名前を出す本人にしかできません。
「全部任せます」で成果が出るほど、事業は単純ではありません。本も同じで、丸ごと外に出した原稿は、誰の本か分からない形で読者に届きます。任せる範囲と手元に残す判断を、先に分けておくのが安全です。
Kindleと、Udemyや講座は、どう使い分ければいいですか?
経験を形にする先は、Kindleだけではありません。僕は、媒体ごとに求められる「見え方」が違うと整理しています。
| 媒体 | 向いている中身 | 考え方 |
|---|---|---|
| Kindle | 考え方、体験、読み物。体系化されていなくてもよい | 自由度が高い。人柄と主張を知ってもらう入口 |
| Udemy | 人に教えるために、体系化された知識 | 順番に学べる形に整える必要がある |
| Brain | 客観的に見える成果やツール | 成果が目で確認できるものが向く |
1つの経験を、すべての媒体に同じ形で出す必要はありません。同じ話でも、Kindleでは読み物に、Udemyでは手順に、と形を変えます。中身は変えず、形だけを作り変える考え方は、リパーパスの記事(関連ページ)で詳しく書いています。
どの媒体から始めるかは、「自分の経験が、読み物として強いか、手順として強いか」で決めます。判断に迷うなら、先にKindleで出すのが現実的です。Kindleは3万字前後で形になり、ほかの媒体より手が軽いからです。
テーマの競争が激しいときは、どう選べばいいですか?
人気のテーマは、競合が多く、新しい本は埋もれます。僕は、あえて競争の少ないニッチなキーワードで、ランキングの上位を取りにいく考え方をとることがあります。
理由は、取れた順位が、そのまま「ランキング1位」という実績表記の材料になるからです。過去の広告の運用では、ある種のジャンルが止まらず売れ続けたという経験もあります。ただし、順位の取りやすさはジャンルと時期で変わります。必ず、出す直前の最新の状況を自分の目で確かめてください。
ここでも、順位は目的の一部であって、全部ではありません。上位に入った本が、読み終えた人を次の入口へ運べなければ、1位の肩書だけが残ります。
出す前の1週間で、何をすればいいですか?
ここまでの内容を、実際に動ける形にまとめます。完成日を先に決め、逆算して小さく分けると、止まりにくくなります。
- 読者を1人決め、その人の悩みを1行で書く。
- 読み終えた人が、次に何をするかを1行で書く。
- 自分の経験を書き出し、棚卸しの3つに分ける。
- 目次を10章前後で作り、1章ごとに書く内容を1行で添える。
- 1章ずつ話して録音するか、書くかを決め、最初の1章を完成させる。
- 本のあとの道(特典と入口)を、案として1枚にまとめる。
最初の1章が完成すると、残りの章の見通しが立ちます。逆に、全体を一度に完成させようとすると、止まります。僕は、最初の1章を、粗くてもいいから先に終わらせることを勧めています。
1冊出したあとは、どう続ければいいですか?
出版の効果は、1冊より、積み重ねで大きくなります。買う前の人に見えるのは、プラットフォームのお墨付きと、世に出ている量です。本が1冊あるだけでなく、2冊、3冊と並ぶことで、「この人は本気で続けている」という信頼が積み上がります。
ただし、量には上限があります。僕の感覚では、月に1冊であれば、打ち合わせで企画を決めれば回せます。毎週1冊は、続くかどうかがまず怪しくなります。出せる上限を自分で引かないと、粗い本が先に自分の名前を削ってしまいます。
もう一つ、Kindleは入口として強い反面、誰が買ったかの名簿は手元に残りません。名簿が残らないのは、媒体が悪いからではなく、買ってくれた人に特典を用意し、LINEやメールへつなぐ道を作っていないだけです。ここまでをセットで考えるのが、本を出す前の設計です。

本の寿命は、3か月から半年ほどで切れると僕は考えています。だからこそ、1冊で終わらせず、本、講座、発信を組み合わせて、同じ入口から次へ流れる形を作ります。
よくある質問
本を出すのに、文章の経験は必要ですか?
必須ではありません。話して作る方法もあります。大事なのは文章のうまさより、読者の悩みと、自分の経験のどこが役に立つかを決めることです。
1冊目は、どのテーマがいいですか?
自分が最も長く話せて、お客さんからよく聞かれる悩みに答える内容がいいです。広いテーマより、狭くても具体的なテーマの方が、読者に届きます。
出版したあとにやることはありますか?
あります。発売直後の告知、特典への案内、LINEやメールへの登録の入口です。本の中での案内の可否はKDPの最新の規約で変わることがあるので、必ず公式の案内を確認してください。
AIに書かせた本は、問題になりませんか?
使い方次第です。ベースの原稿は本人の声から起こし、AIは整える補助に使います。AIが書いた主張を、本人が確認せずに載せることはしません。KDPにはAI生成に関する申告の項目があるため、その点も最新の案内で確認が必要です。
1冊目の完成までに、どれくらいかかりますか?
人によって幅があるため、期間は断言できません。素材の録音と目次づくりに集中して取り組めば、短期間で形になる場合があります。他の仕事と並行すると延びます。先に完成日を決めると、止まりにくくなります。
途中で書けなくなったときは、どうすればいいですか?
完成させる章の順番を変えます。書きやすい章から先に終わらせると、勢いがつきます。それでも止まるときは、書くのをやめて、話して録音する方法に切り替えてください。文字にすると詰まる内容でも、口に出すと出てくることがあります。
本の中に、自分のサービスへの案内を入れてもいいですか?
入れる人は多いです。ただし、書き方や掲載できる範囲はKDPの規約の対象です。最新の規約の範囲で、読み終えた人にとって自然な案内にしてください。
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相談したい方へ
これから本を作る方も、すでに途中で止まっている方も、現状を教えてください。どこで止まっているかを、短い時間で一緒に見られます。先に自分で確かめたい方には、数分でできる診断があります。
執筆・監修:荒屋明神(一般社団法人アイン 代表理事/外部戦略実行責任者)。最終更新:2026年10月14日(現行の外部CSEOのページの記載に基づく)