一般社団法人アイン 代表理事 荒屋明神|外部戦略執行責任者 無料で相談する
集客・マーケティング

やることが多すぎて優先順位を決められない。経営者が「やらないこと」から決める方法

やることが多すぎて優先順位を決められないときは、並べ替える前に「やらないこと」を決めます。基準は一つで、「それは本当に必ず要るか」です。必ず要る物だけを残し、残した物は手短に済ませる。これだけで、手が回らない状態の多くはほどけます。

「やることが山ほどあって、どれから手をつければいいか分からない」「全部大事に見えて、結局どれも中途半端」。経営者や個人事業主の方から、こうした相談をよく受けます。僕はこれまで600人以上の相談に乗ってきましたが、手が回らない人ほど、やることを減らすより先に並べ替えようとしています。

僕は一般社団法人アインで、中小企業の社長の右腕として、集客の道づくりや本・講座の制作を、決めるところから実際に動かすところまで引き受けています。この記事では、僕が自分の仕事とお客さんの支援で使っている「やらないことの決め方」を説明します。考え方の紹介だけで終わらせず、何を問いかけて、決めたあとどう進めるかまで書きます。

経営者が優先順位を決められないのはなぜ?

理由はシンプルで、目の前に「やった方がいいこと」が無限にあるからです。ホームページを直した方がいい、SNSも毎日出した方がいい、LINEも整えた方がいい、新しい商品も考えた方がいい。どれも間違ってはいません。だからこそ、全部が大事に見えてしまいます。

そこに順番をつけようとすると、比べる物差しがないまま「どれも大事」で止まります。1位と2位の差が分からないまま並べ替えを続けて、日が暮れる。順番で悩んでいるように見えて、実は物差しを持っていないことが原因です。

よくある考え方に、仕事を「緊急か」「重要か」の4つに分ける方法があります。便利ですが、経営者の場合はほとんどの仕事が「重要」に入ってしまい、分けきれないことが多い。僕は、先に「やらない物」を外す方が早いと考えています。後回しにする物ややらない物の順番を先に決めることを、劣後順位と呼ぶこともあります。

「必要」とはどういうこと?必ず要るか、あったらいいかで分ける

僕が使っている物差しは、「必要」という言葉をそのまま読むことです。必要とは「必ず要する」という意味です。必ず要する物と、あったらいい物は、まったく違います。ところが多くの人は、この二つを混ぜて「必要」と呼んでいます。

たとえば制作会社や広告の担当者から「LP(申し込みを受けるための縦に長い1枚のページ)が必要です」「広告が必要です」と言われたとき、本当に必ず要るのかを聞き直すと、答えが変わることがよくあります。今のお客さんが紹介で来ているなら、広告はなくても仕事は止まりません。あったらいいけれど、なくても困らない。こう分かった時点で、それは今やることから外せます。

あったらいい物を手に入れるために、時間もお金も気力も注ぎ込んでしまう。手が回らない状態の正体は、たいていこれです。目標の数字にも同じことが起きます。たとえば「年商1億円」を目標にしている社長に「それを達成して何がしたいですか」と聞くと、答えに詰まることがあります。1億円は何かをするための手段だったはずが、いつのまにか目的になっている。そうなると、1億円に近づきそうな物が全部「必要」に見えてきます。

やった方がいいことの札が、必ず要する箱と、あったらいい箱に分かれる図。あったらいい箱は今はやらない
「必要」を「必ず要する」と読むと、あったらいい物が外れる

やらないことは、どうやって決める?3つの問い

「必ず要るか」だけでは迷うときのために、僕は次の三つを順に聞いています。三つ目まで通って残った物だけを、今やることにします。

  1. なくなったら、何が止まるか。売上・お客さんへの対応・約束した納品のどれかが止まるなら、必ず要る。何も止まらないなら、あったらいい物です。
  2. 今の目標に、直接つながるか。今月や今期に決めた目標へ、そのまま効くか。たとえば目標が「今月の問い合わせを増やす」なら、問い合わせフォームの直しはそのまま効きます。会社のロゴの作り直しは、回り回って効くかもしれませんが、今月の問い合わせには直接効きません。「いつか役に立つ」は、今は外します。
  3. 後回しにして困るのはいつか。来週困るのか、半年後でも困らないのか。目安として、困るのが1か月より先なら、今週の分からは外します。その日が近づいてから考えれば足ります。

この三つは、物を捨てるための問いではありません。「今はやらない」と決めるための問いです。外した物は消すのではなく、別の紙に書いて置いておきます。頭の中に置いたままにすると、ずっと気になり続けるからです。

なくなったら何が止まるか、今の目標に直接つながるか、後回しにして困るのはいつか、の3つの問いを順に通し、残った物だけやる図
3つの問いを通って残った物だけを、今やる

小さな会社でよく出てくる仕事を、この問いで分けてみると次のようになります。あくまで一つの例で、答えは会社の状況によって変わります。

よくある「やった方がいいこと」なくなったら止まる?仕分けの例
お客さんへの返信・約束した納品止まる(信用が落ちる)必ず要る。今すぐ手短に済ませる
ホームページから問い合わせフォーム、返信までがつながっているかの点検新しいお客さんが来なくなる必ず要る。月に1回は自分で送って確かめる
SNSを毎日出す今すぐは止まらない問い合わせにつながっている媒体が1つあれば、それだけ残す(2つ目の問いで残る)。ほかは今はやらない
ホームページの全面リニューアル問い合わせが来ているなら止まらない今はやらない。来ていないなら道の直しから
新しい商品づくり今の商品が売れているなら止まらない今の商品が、見つけてもらってから申し込まれるまでの流れが通ってから考える

ホームページがあるのに問い合わせが来ない場合の直し方は、ホームページがあるのに問い合わせが来ない。原因の切り分け方と、道を一本にする直し方にまとめています。

やると決めた物は、どう進めればいい?

残した物の進め方にも、僕が決めている原則があります。二つだけです。

  • やらなくていいことは、やらない。
  • やらなければいけないことは、手短に済ませる。

一つ目はここまで説明してきた、外すための決まりです。実は大事なのは二つ目で、必ず要る物でも、時間をかけるほど良くなるとは限りません。たとえば請求書の発行や日程の調整は、丁寧にやっても売上は変わりません。決まった型を作って、短く終わらせる方がいい仕事です。

手短に済ませるコツは、毎回考えなくていい形にしておくことです。請求書なら金額と宛先だけ差し替えれば出せるひな形を作る。日程の調整なら、空いている時間を相手に選んでもらう予約の仕組みを使う。メールの返事なら、よく来る質問への答えを先に書いておく。一度型を作れば、次からは数分で終わります。型ができた仕事は、そのまま人やAIに渡せる仕事にもなります。

手短にこだわるのは、僕が仕事でいちばん上に置いている決まりが「がんばりたくない」だからです。怠けたいという意味ではなく、がんばらなくても回る形を先に作る、という意味で使っています。気合いで長時間こなすやり方は、続かないうえに、疲れた分だけ判断の質が落ちます。

やらなくていいことはやらない、やることは手短に済ませる、の2つの決まりを並べた図
残した物は、型を作って短く終わらせる

自分でやるか、人やAIに任せるかは、どう決める?

やると決めた物の中にも、自分でやらなくていい物がたくさんあります。僕が「手元に残すか、外に出すか」を分けるときの一つ目の物差しは、難しさでも大事さでもありません。「同じ手順でくり返せるか」です。くり返せる物は外に出し、くり返せない物だけを手元に残します。

手元に残しているのは、判断と、全体の組み立てです。やるか、やめるか。誰に頼むか。どう組めば最初から最後までつながるか。ここだけは人にもAIにも渡していません。逆に、打ち合わせの録音から要点を拾うこと、話した内容を文章に整えること、誰といつ何を約束したかを覚えておくことは、今はほとんど人とAIに任せ、記録に残してもらっています。

もう一つ、外に出す理由として僕が正直に使っているのが「自分がやりたくない作業かどうか」です。自分でやった方が早い作業でも、僕でなくてもできる、やっていて気持ちが乗らない、自分より得意な人がいる。こういう作業は、対価を払って任せてきました。気持ちが乗らない仕事は、続かないだけでなく、品質が落ちるからです。くり返せないけれどやりたくない仕事は、まず手順を書き出してくり返せる形にできないかを考え、できたら任せます。判断がどうしても要る部分だけは、気が乗らなくても手元に残します。

出せる仕事として同じ手順でくり返せる・ほかの人でもできる・やるのがつらい、手元に残す判断としてやるかやめるか・誰に頼むか・全体をどう組むかを並べた図
くり返せる仕事は外へ、判断は手元に残す

任せるときの線引きは、外注・運用代行に「全部任せます」で失敗するのはなぜ?で、AIとの分け方はAIを入れたのに仕事が減らないのはなぜ?でくわしく書きました。

やることの洗い出しも、AIに任せていい?

任せていい、と僕は考えています。以前は、届いた連絡を全部自分で読んで、何をやるべきかを考えていました。今はAI(僕はClaudeを使っています)に、チャットやメールの最近のやり取りを読み込ませて「僕がやらなければいけないことを並べて」と頼み、並んだ候補に対して、やる・頼む・やめるを決めるだけにしています。

ここでのポイントは、並べる作業と決める作業を分けることです。並べるのは人でもAIでもできます。決めるのは経営者にしかできません。全部を自分で読んで、自分で並べて、自分で決めようとするから、決める前に疲れてしまうわけです。

ただし、AIが並べた一覧をそのまま信じるのはやめてください。抜けている物がないか、最初の数回は自分の目で元の連絡と見比べる。そのうえで任せる範囲を広げていくのが安全です。

やることが増えすぎたときは、どう立て直す?

僕自身、これまでに何度か、仕事を増やしすぎて回らなくなったことがあります。振り返ると、立て直したときはいつも同じでした。足すのではなく、引いた。長く続けていた講座を一度やめたこともありますし、受ける相手を絞ったこともあります。やめる物を決めて、手元に残す物を絞ったら、また回り始めました。

回らなくなると、人を増やす、仕組みを足す、新しい道具を入れる、という足し算に手が伸びます。けれど、増やした物にはそれぞれ管理の手間が乗ります。手が足りないところに管理の手間を足すので、余計に回らなくなる。支援の現場でも、どこまでやり切るかより、何を捨てるかを先に決める方がうまくいきます。

立て直すときも、やることは後で紹介する週1回の見直しと同じです。違うのは、最初の1回だけは「何も止まらない物を、今週からやめる」まで一気に進めること。相手がいる物は、やめると伝えてからやめます。空いた時間は、手元に残した判断の仕事に戻します。

たくさんのお皿を回して傾いている様子と、3枚だけ安定して回っている様子の比較
回らないときは、足すより先に引く

決めるのが怖くて動けないときは?

相談の中でよく聞くのが、「決めるのが怖いからやらない。やらないからできない。できないのは自分に能力がないからだ」という流れです。この流れにはまると、優先順位以前に、何も決まらないまま時間が過ぎます。

僕がこういうときにお伝えしているのは、まず一つだけ決めることです。全部を正しく並べる必要はありません。今週やらない物を一つ決める。それだけでも、頭の中の重さは確実に減ります。

「やらない」と決めることは、あきらめることとは違います。「今はやらない」と決めて置いておけば、必要になったときに取り出せます。決めないまま全部を抱えている方が、よほど選択肢を狭めてしまいます。

優先順位は、どれくらいの間隔で見直せばいい?

僕のおすすめは、週に1回です。一度決めた「やらないこと」も、状況が変われば「必ず要る」に変わります。逆に、先週は必ず要ると思っていた物が、今週はそうでもなくなっていることもあります。

見直しは、次の四つを回すだけです。

  1. やることを全部並べる(AIに並べてもらってもいい)。
  2. 「必ず要るか」で分ける。
  3. 残す・頼む・やめるを決める。
  4. 1週間やってみて、次の週にまた見直す。

毎日見直すと、決めることそのものが仕事になってしまいます。月に1回だと、その間に新しい「やった方がいいこと」が積もって、また手が回らなくなる。週に1回くらいが、ちょうどいい間隔だと感じています。

曜日と時間を決めて、予定として先に押さえておくと続きます。たとえば月曜の朝に30分(初めての1回は、全部を書き出すので少し長めに見てください)。先週やらないと決めた物のメモも一緒に見て、戻す物がないかを確かめます。見直しにかける時間そのものも、手短に済ませる仕事の一つです。

やることを全部並べる、必ず要るかで分ける、残す・頼む・やめるを決める、1週間やって見直す、を週に1回まわす図
週に1回、並べて分けて決め直す

やらないことを決めるとき、よくある失敗は?

ここまでの注意に加えて、相談の中でよく見かける失敗を二つ挙げます。どちらも、決めたあとの扱いで起きるものです。

  • 約束していた物を、黙ってやめる。お客さんや取引先と約束していた物は、勝手にやめると信用を落とします。やめるなら、やめることと、代わりにどうするかを先に伝えます。
  • 判断まで人やAIに渡してしまう。並べる作業や手を動かす作業は任せられても、やるか、やめるかの判断まで渡すと、事業の向きがずれていきます。

なかでも気をつけてほしいのは一つ目です。やらないことを決めるのは自分の手元を軽くするためで、相手に負担を押しつけるためではありません。相手がいる物ほど、やめ方まで決めてからやめてください。

よくある質問

全部が「必ず要る」に見えてしまいます。どうすればいいですか?

「なくなったら、何が止まるか」を、一つずつ具体的に書いてみてください。「何となく困る」としか書けない物は、あったらいい物です。売上やお客さんへの対応など、止まる物の名前が書ける物だけが残ります。

やらないと決めた物が、あとで必要になったらどうしますか?

そのときにやれば大丈夫です。外した物は、別の紙やメモに書いて置いておきます。週に1回の見直しで、必ず要る物に変わっていれば、そこで戻せば済みます。

優先順位と劣後順位は、何が違いますか?

優先順位は「先にやる物」の順番、劣後順位は「後回しにする物、やらない物」の順番です。この記事でいう「やらないことを決める」は、劣後順位を先に決める考え方に近いものです。僕は言葉の違いより、「必ず要るか」で外す物を先に決めることを大事にしています。

急ぎの仕事が次々に入って、見直す時間が取れません。

その状態こそ、やらないことを決める時期です。週1回の見直しを全部やる時間がなければ、今週やめる物を一つ決めるところから始めれば十分です。一つやめれば、次の週の見直しの時間が生まれます。

やめると決めた仕事を、取引先にどう伝えればいいですか?

やめる理由を長く説明する必要はありません。「この作業は、○月からこちらでは行わないことにしました。代わりに○○の形でお願いできますか」と、やめる時期と代わりの形を一緒に伝えます。代わりの形がない物は、続けるかどうかをもう一度考え直します。

社員やスタッフに、どこまで任せていいですか?

同じ手順でくり返せる仕事は、任せられます。手順を書いて渡せるかどうかが目安です。やるか、やめるか、誰に頼むかという判断は、経営者の手元に残してください。

一人で事業をしていても、この考え方は使えますか?

一人の方こそ使えます。人に頼む相手が少ないぶん、やらない物を決めないと、すぐに手が回らなくなります。AIや外注先に出せる、くり返せる仕事から外していくのがおすすめです。

やらないことを決めるのを、手伝ってもらえますか?

できます。今抱えている仕事を見せてもらえれば、必ず要る物、外に出せる物、今はやらない物を一緒に分けて、決めた物を進めるところまで引き受けます。

関連ページ

相談したい方へ

やることが多すぎて、何をやめればいいか一人では決めきれない。そんなときは、今抱えている仕事をそのまま見せてください。何を残して、何を外に出して、何を今はやめるかを一緒に整理します。先に自分の状況を確かめたい方には、今の事業のどこで止まっているかを数分で確かめられる診断があります。

メールフォームから相談する / 詰まりの正体を診断する

執筆・監修:荒屋明神(一般社団法人アイン 代表理事/外部戦略実行責任者)。最終更新:2026年10月23日